サービス業 佐藤 武一・和枝さん

草塩の里振興組合 草塩温泉 竹寿司

山奥の寿司一徹と姉御肌の二人三脚

草塩温泉 竹寿司

草塩の里振興組合 草塩温泉 竹寿司
佐藤武一・和枝さん
Takeichi Sato Kazue
1949年12月25日生

早川町で一番好きな場所:奈良田

居住地 :早川町草塩
出身地 :石川県金沢市(和枝さん)
性格 :明るい
好きな言葉 :感謝
特技 :唄、踊り
職種 :サービス業

草塩温泉のこと

草塩温泉は、町営の素朴な立ち寄り湯。重曹を含む弱食塩泉の泉質で、リウマチ性疾患や火傷、皮膚病などに効能がある。施設の一角には、町で唯一の寿司屋「竹寿司」がある。

芸者と寿司職人

草塩温泉のきりまわしは佐藤武一さんと和枝さん夫婦。北国青森の料亭の家に生を受けた武一さんは、寿司で身を立てると決心し、東京の寿司屋に丁稚奉公。15歳から寿司一筋。江戸前寿司の本場、日本橋人形町で店を構えるに至った。その頃、浅草芸者の和枝さんと知り合い結婚。佐藤さん夫婦は日本橋の寿司屋をたたんで移住し、草塩温泉のきりもりをしている。

移住のきっかけ――人生の転機

そもそもの移住のきっかけは、「ヤマで暮らすひとにおいしい寿司を」と始めた寿司ボランティア。初年度は1日で1,200貫をにぎった。早川町には6つの地区があり、寿司ボランティアは6年間で町全体をまわる予定だった。ところが、初年度のボランティアのときには、武一さんは第四ステージのガンだった。「生まれ変わっても寿司屋になりたい」というほど寿司一徹の武一さんは、手術の日程をずらしてもらいつつ、黙々とにぎったという。その後、14時間にわたった手術は成功したものの、体調は万全とはいえなかった。とはいえ、寿司ボランティアは貫徹させたいので、2年3年と早川町に通っていると、からだの具合が良いことに気づいた。武一さんは、和枝さんに切り出した。「のどの調子が良いし、早川へ移らないか」とのことばに、和枝さんは「(日本橋の)竹寿司はどうするの?」と当初はうろたえたものの、武一さんが元気になったのは、早川の“独特な空気”のおかげなんだと考え、気持ちを汲み取って移住することにした。8年前に引っ越したばかりの頃は、サルが大根を引き抜いたり、割ったスイカを仲良く食べているのを目の前にし、「動物園に来たようだね」と言って笑ったこともあった。いま、買い物帰りに早川橋を渡り、町内に入るとホッとする。新緑や紅葉は美しいし、夫婦の平穏無事な暮らしを約束してくれているような安心感がある。和枝さんは、移住して本当に良かったと感じている。 山奥の寿司屋にかかるのれんは日本橋からもってきたものだ。築地直送のマグロをだしている。素朴な草塩温泉の味わいは深い。

恩返しのもてなし

いまの暮らしに対する恩を地域に返したいとの思いから、夫婦は草塩温泉をより魅力的なものにしようと考えている。そのために、ふたりは寿司職人や芸者で培った経験をいかしながら、こまやかなもてなしを心がけている。 冬のゆず湯はもとより、夏のシソジュース。力士からはちゃんこ鍋を教わった。こどもたちが喜ぶようにと、無料の菓子コーナーを設置し、キャンプ場のお客さんには、季節の野菜などを提供している。クリスマスの時期には、サンタクロースの人形で飾り立て、素朴な温泉を季節にあわせて、にぎわせている。 また、町内の奈良田とゆかりのある、奈良の薬師寺・管主による講話を「一年の行事」に織り込んで魅力を引き立てている。法事や宴会などにも対応できるので、姐御肌の和枝さんにぜひ一度ご相談を。 いま、草塩温泉で民泊ができるように許可取得の準備をしている。突然の雨に困ったバイク乗りは助かるし、宴会や食後にそのままゆっくりと休めたら、きっとお客さんは喜ぶだろう。夫婦の二人三脚は続いている。

編集サポーター

草塩温泉 竹寿司藤井紘司さん(早稲田大学人間総合研究センター 招聘研究員)
新竹哲明さん(早稲田大学人間科学部 学生)
井上真教授(早稲田大学人間科学学術院 教授)


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